巾木/幅木/はばき とは?
建築を今まで学んできた人は「幅木」は何かとはすでに分かっている人がほとんどだと思います。
しかし、建築を専門としないお客さんと打ち合わせする中で「幅木」についてきちんと理解している人はあまり多くないということに私は気づきました。
そして事務をする中で幅木をどう納めるかについて、これから悩むときがくるはずです。そんな時にこの記事を振り返ってもらえると幸いです。
まず幅木の役割ですが、大きく2つあります。
① つま先や掃除機などで壁を傷つけないないため。
② 壁と床の隙間を隠す、または目立たなくさせるため。
一般的には①の役割が多く知られています。足元付近の壁は特に汚れやすいです。幅木をつけないこともありますが、やはり1年経たないうちに汚れは目立ってしまいます。
幅木をつけることのデメリットに、見た目がやぼったくなりやすいことが挙げられますがその場合は使う人にきちんと維持管理について説明が必要となります。
また、幅木は壁から少し出っ張っているため、家具などを壁際に置いたときに、壁に当たることを防ぐ役割もあります。
②は施工精度のはなしです。これは新築、リノベーションに関わらず、壁と床は別々に工事するものです。当たり前ですが…
この別々のものがぶつかる場所は施工精度が悪いと、隙間が目立ちます。これから建築士を目指す人に注意してもらいたいのは、施工精度がよくても必ず隙間は生じるということです。設計する際は施工精度をきちんと念頭において、隙間があく前提で設計する必要があります。
幅木はこのすき間を目立たせない役割があります。
部屋にあった幅木の高さ、種類、素材を選ぶ
幅木の種類は様々ですが、主に4種類に分けられます。
①木製幅木:天然木を加工した幅木で自由に加工できるため様々でデザインにできる
②MDF+化粧シート:建売住宅やマンションに多い。コストが安い。
③ビニル幅木:柔軟性がありコストが安い。
④アルミの見切り材:裏技みたいなものです。シャープな印象になります。
私個人としては基本的には①の木製幅木がおすすめです。ただ、コスト面では高くなるため世の中の多くは②か③の種類が多いです。①の木製幅木も既製品を使うことによりコストを抑えることができますが、デザインを細部までこだわりたい場合は大工さんに加工してもらうのが一番です。
部分的なリノベーションの場合は、無理に木製幅木にせずに他の幅木と合わせるようにしています。
幅木の高さは標準で4cm/6cm/7.5cmの種類があり、これとは別に3cmといった高さが低いものや10㎝のものもあります。部屋の印象をスッキリとしたい場合は3cmの幅木を使うことがおすすめです。
3cmの幅木は既製品ではあまり種類がないため都度調べる必要があります。
おすすめの既製品幅木
おすすめの既製品幅木は、サンワカンパニーの「ノッポ幅木」とパナソニックの「スマート幅木」です。これらは高さが3㎝で種類もあります。
新人建築士のための幅木の標準詳細図
では本題の幅木の詳細図の説明です。MDF幅木とビニル幅木は単純に壁に貼り付けるだけなので、ここでは説明しませんし、図面に描く必要もないと思います。
まず標準的な木製幅木の納まりを紹介します。標準的な納まりを理解してから自分なりの納まりを考えてみてください。
幅木の納め方は出幅木と付け幅木の2種類あります。
①が一般的な出幅木の納め方で、ボードがのっかる部分にしゃくり(欠きこみ)をしています。しゃくる目的はボードと幅木の間の隙間を隠すことです。
木材は水分を含むと膨張し、乾燥すると縮小します。梅雨時期に施工したのか、それとも乾燥している冬に施工したかによってその後の隙間の空き具合は異なりますが、あらかじめしゃくりを設けることによって乾燥して隙間が生じても隠すことができます。
逆に②の納め方はしゃくりを設けずに幅木の上にボードを施工したものです。施工の手間は①に比べ簡略化されていますが、乾燥して隙間があく可能性があります。
③は最近多い付け幅木です。図面では7mmの厚みで描いていますが、既製品でない場合はそれより厚くなる可能性があります。大工さんと相談しながら一緒に決めるといいでしょう。
上の写真は①の出幅木の実際の施工写真です。
幅木は壁に打ち付けているのではなく、上から床に留めていることが分かります。そしてしゃくった幅木の上に石膏ボードを載せています。
今回は3種類の幅木の納め方をご紹介しましたが、実に多様な納め方があります。
雑誌などをみると薄くて軽やかな納まりから、幅木をなくす方法も色々紹介されていますが正解はありません。大切なのは、なぜ幅木をつけるのか?を考え、用途や空間のイメージに合わせて自分で考えて設計することが大切です。
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